倉敷美観地区でせんべい

倉敷美観地区といえば、白壁・なまこ壁の屋敷や蔵が立ち並び、天領時代の趣を残す街並み。
瓦屋根が並ぶ街並みを一望できるのが、美観地区の北端に位置する鶴形山。
ゆったりとした緑をたたえる鶴形山は、公園として手入れされており、穏やかで長閑な時間が流れている。

町の人にとって、子供の頃から定番の遊び場は鶴形山だった。毎日見晴らしの良い高台に駆け登っては、街を眺めながらお菓子を食べたとか。


街歩きの小休憩は、美観地区に暮らす人の思い出が詰まった憩いの場所で、どこか懐かしい気持ちに浸って、ゆったりと過ごしてみては如何だろう。

美観地区に接する登り口から10分ほど歩くと眺望ポイントに辿り着く。
眺望ポイントのすぐ近く、鶴形山の山頂には倉敷の総鎮守、阿智神社が鎮座する。

境内周辺の手入れの行き届いた緑は、四季折々の豊かな表情を見せてくれる。中でも、御手洗の手水舎に施された、情緒あふれる花手水は必見。花手水とは、参拝者が身を浄めるために使う手水に、色とりどりの花々を浮かべた飾りつけである。


この日は、肌寒くなってきたとはいえ、まだ山の中で紅葉を目にできる場所は見当たらない。それにも関わらず、季節の変わり目を写したように鮮やかな若緑から朱色に染まった紅葉の葉が、水面下に設えられていた。


花の上に水紋が広がる様は、見飽きることなく、見るほどに、穏やかに心を高揚させる。阿智神社の花手水は、紫陽花、桔梗、紅葉など、季節に合わせて様々な表情を楽しむことができる。見事な花手水を通して季節の流れを美しく捉え、垣間見せてくれるのは、どんな方だろうか。

神社に至る道中で随所に目を奪われて寄り道ばかりしていたら、神社の境内でゆっくり過ごす時間がなくなっていた。境内の魅力は、また後日。


神社から戻る道中、美観地区の商店街から程無くの所にある祠をふと目を向けると、いつも暖かく迎え入れてくれる美観地区の人を思わせるような神様が祀られていた。


この街は、ここで暮らす人のひたむきで、温かな、工夫や思いやりでできている。
それだから、あしまかせに歩いてもこんなに楽しいのだろう。